「よい食材」とは何だろう?
食べられる花屋EDIBLE GARDENを運営する.scienceの小澤です。
これまで日本全国を巡る中で、200名以上の生産者にお会いしてきました。対面して現場の課題に触れる中で、『よい食材』づくりに励む彼らをどう応援できるのか、そしてその『よい食材』をどう売っていくのかを、日々考えています。
しかし、はたして『よい食材』とは、何でしょうか?
何をもってそれは、『よい食材』になるのでしょうか?
これは、その人の価値観によって解釈がガラリと変わる、とても主観性の強い問いだと思います。たとえば、ぼくは静岡のおばあちゃんから送られてくるじゃがいもが大好きです。おばあちゃんがそのじゃがいもを一生懸命そだてている風景が、ありありと目に浮かびます。それを想像しながら食べるだけで、おいしさは2倍にも3倍にもなるんです。
最近は、「日本食べる通信」や「ポケットマルシェ」など、生産者のストーリーを発信しながら食材を販売することが注目され始めています。「愛着のある生産者が一生懸命に育てた食材であること」。これは、「よい食材』になるために必要な1つの要素ではないでしょうか。おばあちゃんのじゃがいもも、これと同じですね。
しかし一方で、こういったストーリーテリングやコミュニケーションは「生産」の外側にある、あくまでもテクニック寄りの話だと冷静に捉えてもいます。
「よい食材づくりに一意専心する職人気質な生産者は、まだまだ表に出てこられないのではないか」
「つくり手として、あくまで『ものづくりの品質』で勝負できる土俵を用意できないか」
前々から思っていたそんな課題感の解決アイディアが、このコラムのタイトルです。
生産者の努力を「可視化」する意義
さて、だいぶ前置きが長くなってしまったのですが、ここからが本題です。
ぼくが長年抱えていた、この課題に対する答えは、「カンブリア宮殿」にも出演された宮治勇輔さんが育てるみやじ豚のHPにありました。それも、ワンフレーズで。
「みやじ豚のうま味含有量は平均の2倍」
みやじ豚は、うま味のもとである「遊離グルタミン酸」の含有量が26mgであること。それは、国産の銘柄豚の平均13.9mgを大きく引き離していること。すなわち、うま味たっぷりの豚肉であることを、成分分析によって証明していたのです。
これを見た瞬間に、視界がひらけました。
成分分析による品質の数値評価。これは言い換えると、「生産者の努力の可視化」です。表現のテクニックだけで勝負するのではなく、絶対的な客観性を持つ「数字」という尺度で品質を保証する。これこそが、職人的な生産者が抱える課題解決につながるはずだ——そう感じました。
「生産者のストーリーや愛着といった主観評価と、その対極にある『品質の数値化』という客観評価。この両輪を回しながら食材ブランドの輪郭をつくっていけないだろうか?」
そんな想いがふつふつと育つ中で、現.science取締役の木村と出会います。成分分析ができる研究者である彼との出会いが、『YOKOTA ROSEの香り成分の含有量が、平均的な食用バラの3,840倍であること』を打ち出すきっかけとなったのです。
こうしてわたしたちは、「食材の品質証明」という新しい武器を手に、食材ブランドづくりの挑戦をはじめました。手がける食材は、まだまだ多くはありません。これから「生産者の努力の可視化」を進めることで1人でも多くの職人気質の生産者をサポートし、1人でも多くの人に本当の「おいしい!」を届けていきたいと思っています。