生産者の魂を可視化する役割

食べられる花屋EDIBLE GARDENを運営する.scienceの木村です。

私は大学院での農学研究期間を含め、10年以上、農業や食についての研究や調査を実施してきました。今回は私たちの研究コンセプトについて、お話しさせていただきたいと思います。

私は常々、「食品や農業に携わる研究者は無力である」と思っています。なぜならば、よい青果物を生産するのは農家であり、土や虫などの自然のチカラであり、雨やおてんと様であるから。研究者が生み出すものではないからです。

尊敬できるすばらしい生産者に出会うと、私はいつもこう思います。

「この人は、なんと自然の摂理を理解されているのだろう!」

彼らはみな共通して自分自身で自然の法則を導き出し、それに基づいた解(=生産方法)を持っています。「うまいもの、素敵なもの」を生産しているその解こそが、生産者のこだわりであり魂なのです。

ただ、すばらしい食材を生産している現場に行き、その解(=生産方法)を聞くと、「なんだ、そんな単純なことなのか!」と、そのシンプルさに驚嘆することがしばしばあります。しかしその背景には、24時間365日、自然と誠実に向き合い、紆余曲折を経た生産者の努力が必ず存在します。

さらに、その過程で得られた自身の経験や感性がないと、生産方法をただ真似ただけではうまくいかない、という奥深さを知ることもできました。

生産者を輝かせる科学の力

シンプルで合理的な「生産者の解」は、一種の芸術品です。私たちの研究とは、その芸術品の価値を、科学的に証明すること。そして、それは「生産者の努力の数値化」を意味します。

これからも私たちは、生産者の解を科学的に証明していきます。生産者自身も気づいていない価値を見出すことができれば、それは私たちにとって最高の喜びなのです。

食に携わる研究者はある種、無力かもしれません。

ですが、科学の力は生産者を輝かせることができる。私たちはそうと信じています。